猫 昨日ふみは,「独りにしないで」と云っていた。
片方だけの瞳で,弱弱しい鳴き声で,痩せて力の入らない足腰で。
常に「私をかまっていて」と訴えている彼女だけど,
それがより強く,切なげにアピールされる時がある。
今日はよほど,仕事を休もうかと迷いが生じた。

ビル 昨秋から月に8回,雑誌編集部で記事の派遣校閲をやっている。
それと,毎週土曜の派遣校正。
どちらも自分の能力に不安を感じながら,1年以上続けている。

電車 今週は校閲のため,4日間連続で出社する。
でも,4日サイクルの1日目は仕事量が少ないのが恒例だ。
だから,「早く帰って来るよ。ごめんね,待ってて」と
ふみを安心させるように話して出かけたのだった。

ところがなぁ。師走のせいなのかな。
それとも「こんな日もあるさ」っていうのに当たったのか。
思いきり仕事があって,息もつけないまま時間が飛んでいく。
走って電車に飛び乗り,地元の駅に着いたら雨が降っていた 雨

雨のしずくを滴らせながら,部屋のドアを開け,
開口一番「ただいま!ふみちゃん,ごめんね」と謝る。
帰宅の気配を感じて,ふみが玄関まで出てきていたのは,
6月までだった。そのぐらいまでだったと思う。
癌細胞の侵蝕に後ずさりさせられるように,
身体から力がどんどん抜けていき,
ふみは今では殆ど歩かない。必要最低限の歩行だ。

のどにも腫瘍の影響が出ているんだろうな。
ふみは鳴き声をあげることもホントに少なくなった。
だから,帰宅しても部屋で彼女の姿を確認するまでは,
生きてくれているのかどうか判らないんだよ,もう。

今夜も生きててくれた… クローバー