文世さんに逢いたい

婆猫ふみちゃんが逝って、もう15年。
今は自分が人生休止中。ミライは10歳シニア猫です。

派遣歴長し。
限界を感じました。

2009年04月

桜坂

  昨日が“四十九日”だった。
  7週間か…
  7日しか経ってないような気もすれば,
  既に半年以上の時間が経過したような,消耗も感じる。

                           ce6cc608.jpg


  3月6日。
  ふみが起き上がれなくなった翌日。
  ふみが旅立つ前日。
  幸い,その日出社する予定になっていた編集部の仕事が,
  スケジュール変更で翌週にずれ込んだため,
  終日部屋でふみと過ごすことができた。

  終日,泣いていた。
  ふみにいっぱい話しかけては,泣いていた。
  私の腕にあごを預けて,静かに目を閉じるふみが,
  一番望んでいたことは何だろう?

  音楽を流していた。
  ふみは低い声・低い音に安心する。
  だから,福山雅治や浜田省吾の曲を,
  繰り返し流した。

         君よ ずっと幸せに
         風に そっと歌うよ


  春はやってくるのに。春がやって来たのに。

時の荒野

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家 春が終わろうとしているのに,
衣替えの時季を迎えているというのに,
部屋の片付けは全く進んでいなくって,
依然として雑多な,すき間のない空間だ。

でも,時間にはすき間があるんだよね 星

仕事に出かける時。仕事から帰った時。

シャワーを浴びただけなら,ふみは気にしない。
朝~昼のシャワーは,365日私の習慣だから。
でも,ドライヤーの音が聴こえてくると
ふみは「外出が近い」ことを悟る。
出勤しない日の私がドライヤーを使うことはないから。
外出の前ぶれを感じ取ったふみは,
ずっと私の動きを目で追うことになる。
視線が痛い…目を合わせないようにする私。
準備が整った時,ふみが眠っていれば問題ないのだが,
起きている上に,目で責めている場合は,
ふみのご機嫌をとって,必死になだめる必要がある。
「ふみちゃん,ごめんね。仕事に行かなくちゃならないんだ。
 できるだけ早く帰ってくるから,お留守番頼むよ」
まぁ,結局ふみが納得してくれることはなかったな…
毛繕いしたり,ご飯の用意をしてた『文世さまタイム』が,
今は必要ない。ぽっかり20~30分の時間が余っている。

20~30分の『文世さまタイム』は,帰宅時にも必要だった。
うぎゃ~うぎゃあ(何してたの!?ずっと待ってたんだよ!)
と鳴いて責めるふみに謝りながら(人間の尊厳は無い),
ご飯の用意をして,トイレの掃除をしたりする。
時には嘔吐の後始末(故意にやったものが多いと思う),
昨秋からは放尿のクリーニングも必要になった。
今は,真っ先に自分の事ができる。
服を着替えて洗顔して,立ち上げたPCの前に座る,
ここまでの動きに何の邪魔も入らない。

“時間の余裕”って,ありがたいとは限らないんだね。

この「時のすき間」は埋まらない。
意識して,埋めようとも思わないけど。
いつか,本棚の空きが文庫本で補われるように,
ふみが遺していった「時のすき間」も,
自然になくなる日が来るんだろうか。

エメラルドに,逢えない

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昨年5月の最終週に,タクシー帰りになった事がある。
ふみに悪性腫瘍の診断が下りた翌週だった 病院

仕事の間じゅうずっと,ふみが気がかりでならなかった。
家 だから玄関のドアを開けて,2粒のエメラルドを見た時,
堰を切ったように泣き出してしまった
(ふみの右眼が破裂するのは3か月半後の事であり,
 6月ぐらいまでは出迎えに動く力もあった)。
「ごめんね。遅くなってごめんね,ふみちゃん」
床に膝から崩れ落ちて,ふみを抱き寄せると,
いつまでも涙が止まらなかった。

車 編集部からタクシーで帰るのは,
一刻も早く,ふみの待つ部屋に帰るため。
ただ,それだけだった。

だから,翌日に仕事が控えていない限り,
高い経費を出してもらって,タクシーで帰る必要はないんだ。
待っているふみがいない今は。
終電を逃したなら,始発まで時間をつぶしていたっていい。

タクシーが千代田区~高速のルートを採るので,
昨日は少し,儲けた気分になった 
道のどちら側に目をやっても,
見事な夜桜が闇に切なく浮かび上がっていたからだ。

高速道路に上がってからの眺めも悪くない。
流れ去っていく夜景。
ただもう今は,闇と灯の織り成す情景の中に,
自分が見出すのは闇だけだ。

浮かび上がるエメラルドに,もう逢えない。

湾岸道路

メモ 昨日は結局,電車が終わっても仕事が終わらなかった。
体を動かす仕事ではないものの,
長時間目を使い続ける作業は,“肉体労働”に思える。

「単調な業務を淡々と繰り返す」
―― 能力勝負に無理のある自分が,
唯一アピールできるのが,鈍重な辛抱強さだった。
それだけを「世を渡る“お椀と箸”」にして,
20年近くバイトや派遣で雇ってもらってきたのだった。

自動車 景気の好い頃,下っ端のバイトの分際でも,
タクシー帰りを許される事が少なからずあり,
その時は,車窓の外を流れる夜景を愉しんだ。
いつもの電車やバスじゃない。
湾岸道路が家路となる夜が,心地よかった 星
月日は流れ,かなり年を食ってくたびれた現在。
久々にタクシー帰りの夜が復活している。
雑誌編集の派遣業務に就いた,この1年半以内で,
計5回は超えてるかなあ。大した回数じゃあないか。
1セット4日を月2回。各回で山場が1日はあるが,
どうにか終電で帰れる範囲で収まるから,
タクシーを利用するケースは,やはり“レア”なんだよね。

昨晩,いや正確に言うと日付が替わり,今日。
タクシーから外に向ける,自分の目は暗かったと思う。
陰鬱 流れ星

桜の季節に君の不在を想う

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午前中,防衛省の敷地内で事務官が自殺したらしい。
しかし,市ヶ谷のお濠にしなだれかかる桜も,
防衛省の外壁から枝を伸ばす桜も,
水と光を集めて,すべてが美しい春の一日だった。

ひと月経った。
もうそんなに経ったのか。
そうだね。光の色も風の匂いも変化している。
季節が移ろっているのだから,時間は流れている筈。
それでも,せいぜい1週間弱の経過にしか感じられない。
相変わらず,心の時計の進みはのろいようだ。

世間は春になっていたよ,ふみ。
みるみるうちに,桜の花が空に拡がっていってた。
ふみと一緒に迎えられなかった季節が,
今,外には在るんだ。

幾十年かの孤独

深夜から朝にかけて,何度もふみの鳴き声が聴こえた。
それに応えたいと思うのに,体は動かない。

人は「きっとまだ傍に居るんだよ」と言ってくれると思う。
…なら,いいんだ。救われる。
でもね。みんな,ゴメン。
私は,ふみが近くに居るとは感じられない。
じゃあ,“虹の橋”にたどり着いてるんだろうか。
いいや。“虹の橋”の存在を私は信じているけれど,
ふみはそこには行っていない気がするんだ。

独りぼっちで,見知らぬ場所に居るのではないか。
心細くて,鳴いて呼んでいるのではないか。

あれだけ「独りが耐えられない」猫のくせに,
他の猫とはつきあえないときたもんだ。
ひたすら待ってる,自分を愛してくれる人間を。

あとちょっと,待っててくれないか?
二十年じゃ永いかな。
ふみが生きた年数と同じだけの待ち時間。
申し訳ないが,頼むから…しばし,
孤独な月日をしのいでくれないだろうか。

きっと行くから。その時,
『んもぅ~っ 遅いじゃないびっくり
ずっと待ってたんだからねっ』
と,いつもの台詞で迎えてほしい 猫

プロフィール

あつぶこ


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