「世の中、金よ」と仰る文世さま
毎日同じ電車に乗り、同じ電車で帰って来る。
その繰り返しができている日常は、幸せです。
たとえ、通う職場で毎日何を感じようと。
グジグジ文句言ってないで。怒るより動きなさいよ、まず
初めて「完全失業」を体験した2004年。
部屋には、15歳のふみが居ました。
迷走し、慌てて飛びついた仕事で失意を味わう。
失業と失意。どちらが酷か。この二つはセットなのか。
醜く足掻く私に、涼しい顔で「私のそばに居ればいいじゃない」、
そう云ってくれるふみが居ました。
失業し、さらに窮まってしまった2011年。
大野くんには助けてもらった筈…なのに、
私は彼を幸せにする事ができませんでした。
一番ツライ時期を共に過ごしてくれた大野くんが居ない。
求人情報を掲載したフリーペーパー。
夕刻の電車の中で、人がそれを手にしているのを見ると、
何故か今でも焦ってしまいます。
お経を唱えるように、ブツブツ言いながら、
血眼になって求人広告を指でなぞっていった。
あの日々がよみがえるのでした。
近所のスーパーに行くと、入り口の所に
フリーペーパー専用のラックが置いてあるんです。
やっと、最近ですね、
そこに目が行かなくなったのは。
ぼんやり手に取りそうになっては、ハッとする。
「あ。いいんだよ、まだ。必要じゃないから」
と、自分に言い聞かせていたのは、ついこの間。
ふみの生まれ変わりのようなミライ。
粘着質だけれど、まだ若いせいか、
私を送り出すことに抵抗はないようです。
「行ってらっしゃい。稼いでくるんだぞ…!!」
今は、失業するのが心から怖くって、
機械よりも“無”の状態で、通勤電車に乗っています。
ミライと黒絵と大野くんのため。
それだけじゃない。
やっぱり、自分自身のため。