ふみが年越しをしてくれるなんて,
“望外の歓び”だった。
平成元年生まれの彼女が,平成21年を迎える
―― それだけでも凄い“お年玉”だよね
「骨の髄まで悲観的」な私が,ふみに関しては
どうしてだか,“楽観”の立場をとることが多かった。
「現実の苛酷さ」をしかと認識するのを避けるように,
都合よく思考が麻痺していたんだろうか。
1月に歩行困難が深刻になり(脳が癌に圧迫される事によって
平衡感覚や運動機能に支障が出る),
2月には食事量がいよいよ減ってきた
(癌の侵蝕によって嗅覚が失われ,咀嚼も困難になった)。
病状が進行しているにもかかわらず,
ふみに食欲があるという事が,救いでもあり誇りでもあった。
「この状態で食欲があるって事はめずらしいですよ」
動物病院の先生も感心してくれてた…。
危険信号の点滅を感じながらも,
私はふみと春を待とうと思った。
独り暮らしだともてあます45リットルのゴミ袋が,
ふみがペットシートを使うようになってから
(トイレまで歩いて行くのが難しくなったため),
2日に1袋ペースで消費される。
2月末,30枚入りの徳用を初めて買った。
確かにこのほうが“お得”なんだけど,
何故だかこれまで,ちまちま10枚入りしか買わなかったのよ。
そして,3月3日
ちょうどペットシートがなくなるところだったので,
夜半,雪の降り始めた外へ出て,マツキヨで購入してきた。
燃やすゴミ袋も,ペットシートも大量に残った。
そのゴミ袋がついに先日なくなって,
時間が流れたことを実感したなぁ…
もうずっと,30リットルを10枚ずつでいいや。
ペットシートはさすがにそのまま,手付かずだ。
実は11日にギックリ腰になった時,トイレに行くのも難儀で,
最悪の場合は「ふみのシート使おう」と考えたけどね。
ふみが忘れていったもの。
一番大きな忘れ物は,私じゃない?