霧雨…いや,小糠雨というのか?
全身に,心に,絡みついてくる雨の中を歩く。
アルコール度数25の麦焼酎を買うために。
父の命日が近い。
お酒に強い人だった。
ただ,ずっとビール党だと思い込んでたんだよな。
母に確認したら違った。
一番好きなのは日本酒だったんだって。
顔も性格もそっくりな私は,体質まで父に似ている。
膵臓には要注意だ…う~ん,もう遅いかもしんない。
自分の誕生日から弟の命日までの2か月。
それは,毎年私がさまざまに迷走する期間だ。
ほぼ“習慣”となっているのが,
『草原の輝き』という映画と,
その中で朗読される同名の詩に思いを馳せること。
映画と詩について知ったのは,高校時代。
愛読していた映画雑誌からだった。
落合恵子が連載エッセイの中で取り上げていたのだ。
「青春」なんて言葉は,今やすっかり死語だろうか。
だいぶん色褪せているには違いない。
でも,十代の頃の自分には,輝いて見える単語だった。
聴覚よりも,視覚。
眩しくて,手が届かない…
自分には絶対に縁のないキーワードだと感じ,
憎しみさえ覚えていたから,そのエッセイには胸を衝かれた。
落合恵子も,「青春」という言葉に同様の思いを抱いていた。
“青春と呼ばれる季節”に籍だけ置き,
呪詛を吐きながら成人した。
しかし,20年前にふみとヒロが身内に加わった時,
思い返せば自分は,“青春”の中に居たのじゃないか?
片思いをしていた。
スニーカーより小さい子猫に,好きな人の名をつけた…
ふみとヒロは,妹と私の“青春の象徴”でした