6月中旬の兄妹

  大野くん不在のまま、10月が終わってしまいました。

  2年前、黒絵が倉庫部屋に入り込んで眠っていた10月初旬。
  4年前、大野くんが新しい家族になった10月24日。
  10月に入った時、「今月はメモリアル月間だね」と
  明るく言っていたら、その1週間後にこんな事態になるとは…。

  困った事態に陥った時に、知る事ってたくさんあります。

  昨年6月の宵の口に大野くんが忽然と姿を消し、
  翌日の職場で、昼休みに次々と電話をかけました。
  市内の保健所・警察署、そして市役所の清掃課。
  まず最初に電話した保健所の職員さんが、
  「ほかにも、こういう所に問い合わせてみるといいですよ」
  と教えてくださったのが、警察署と市役所清掃課です。
  その2つに連絡する事を、私は思いつきませんでした。
  正しくは「知らなかった」と言うべきでしょう。

  ただ迷子になっただけでなく、車に轢かれるなど
  事故に遭った場合、その動物は(残念ながら生きていない状態で)
  管轄の役所の清掃課などに収容されるそうです。
  最悪のケースを想定し、生死の確認だけはしたい。
  躊躇や葛藤の時間をもつことなく、電話を入れると
  「数が多いので、地域を教えてもらえますか」と訊かれ、
  少なからず驚きました。
  一つの市で、毎日そんなに猫が…。
  その時は、自分の居住地および隣接エリアで
  収容の記録がない事を確認して、僅かに安堵したのですが、
  「首輪を着けている猫の場合、写真を撮っておく」という話は、
  重要に思えました。

  首輪…

  大野くんに首輪を着けたほうがいいのではないか。
  それは、彼が去勢手術を受けた後で、
  何度か考えた事ではあります。
  平均在室時間23時間半(晩年のふみと変わらない)。
  冬以外の、晴れた昼下がりにはベランダから外に出て、
  少しだけ遊んで帰って来るのが大野くんのライフスタイル。
  どんなに短時間であっても、外に行く以上は
  “飼い猫”である事が人目に判ったほうがいい。
  野外の猫の存在を快く思わない人も居る訳だし、
  ましてや大野くんは「耳パンチ」をしていないから…。

  結局、着けないままでいました。
  昨年の50時間失踪後、再検討の機会はあったものの、
  すっかり大人になってからの首輪装着に、
  人間側が消極的かつ否定的でした。
  なんだか…むしろ縁起が良くないかな、なんて考えた。
  大野くん自身が嫌がるかどうか、
  試すだけでも試してみればよかったですね。

  10月の2週目、清掃事業課に2回電話を入れました。
  照会の地域も広めに告げて調べてもらうと、
  「さすがにそこまでは行かないだろう…」という
  場所の記録ばかり。それでも念のため特徴を尋ねた時、
  「首輪をしていない猫の場合、記録として残るのは
   収容された日と場所だけ」なのだと、初めて知りました。
  昨夏の私は、該当地域にデータがない点で満足し、
  そこで照会を終わらせていた為、
  記録保存のシステムを知らずにいたのです。

  キジトラの去勢済のオスで4歳半…
  「オスかメスかも記録はしないんですよ」
  対応してくれた職員さんが、申し訳なさそうに言っていました。


  大野くん
  今のキミは、もしかしたら幸せな状態じゃないかもしれない。
  でも、キミの運はまだまだ尽きてないと思うんだ。
  だって、キミは不思議なLUCKY BOYだぜ?