ミライを猫可愛がり


    
     先月下旬の夕方。
     バッグの中で、携帯電話がブルブル震えました。
     通常は、昼休みを除いて、メール着信もそのままにしています
     (派遣という弱い立場のため…)。

     でも、その時はふと予感がして、
     静かに電話を手に取ると、業務フロアの外に出ました。
     
     大野くんに似た猫を何度も目撃している人からの電話でした。

     貼り紙を出していただいているお店の常連さんです。
     私がお店に顔を出すと、オーナーさんが仲介役として、
     目撃情報を伝えてくれていました。
     だから、まだ一度も本人にお会いした事はないし、
     直接連絡してもらうのも、その時が初めてでした。

     


ベランダで仔猫ミライと



     「チビちゃん(大野くんの通称)が公園で木登りしてたんです」

     常緑樹のため、枝の葉に隠れて写メは撮れず、
     しばらく彼女は粘ってくれたのですが、
     降りてくる様子がなくて、諦めたということでした。


     元気なんか?


     昨夏は木登りするミライを下で見守っていたけど、
     キミだって身体能力は高いもん
     (大野くんと名づけた理由がそれだし)、
     そりゃあ楽々と木に登れるよなぁ。


     人前で泣くようなことはまずしない私が、
     しかも、仕事中に、気がついたら嗚咽していました。


     その人自身も忙しいのに、電話してきてくれた優しさが心にしみた。

     そして、これが一番の理由でしょう。
     大野くんに逢いたい気持ちがこみ上げて、あふれて、
     水滴になってこぼれてしまったんです。




黒絵にグルーミング




     人の行き来がとっても少ない、非常階段のような場所なのに、
     そういう時に限って、何人も社員が現れるのね…

     背中を向けてたから、誰が通ったのか未だに知らないけど、
     通った人の多くは、たぶん私が泣きじゃくっている様子に
     気づいたことでしょう…。
    
     いやぁ、実に不思議だ。
     いつもなら、私がスクワットやっていても、
     その間誰も通らないような場所なんだけどなぁ。


     逢いたい。逢えない。


     これは、“幕間”なのだと信じたいです。
     まだ、終わりじゃない…



追記:校正のバイトを始めてしばらく経つまで、
    「幕間=まくま」と読んでいました。