文世さんに逢いたい

婆猫ふみちゃんが逝って、もう15年。
今は自分が人生休止中。ミライは10歳シニア猫です。

派遣歴長し。
限界を感じました。

野良猫・地域猫

猫の居場所


    陽射しが春めく2月後半から、
    3月、桜の綻び、この時季が
    いつも憂鬱だ。
    理由は花粉症じゃあない。
    町に「新顔」が現れる季節だから。

    引越しシーズンの到来は、
    捨て猫が増える事も意味する。
    新顔は、すぐ判る。
    戸惑う様子が全身に表れているもん。

    そりゃそうだよ。
    前日まで「家ネコ」だったんだから。
    人間と暮らしていたんだから。
    それが、唐突に放り出される。
    食住の保障が無い外で生きて行けと、
    置き去りにされる。
    あるいは、離れた町から
    連れて来られたかもしれない。
    
    どっちみち、完全室内飼いだったら、
    その町を知ってるも知らないもない。

    転居先が「ペット不可」の物件だった。
    まず、「ペット不可」を決める事情が、
    よく解らないんだが(社宅とか?)、
    そこをいったん措いても、
    「置き去り」の結論が不思議でならない。

    転居に当たって、「あなた」は、
    不動産で幾つも物件を検討したでしょう。
    引越し業者の選定も相見積りを取るなど、
    予算の面で悩んだりもしたでしょう。
    それと同様に、猫の行く末に関しても、
    検討を重ねてくれましたか?

    猫ブームと言われても、
    「ペット可」の賃貸住宅は少ないままだ。
    分譲であっても不可な所は多い。
    だから、貰い手を見つけるのが難しい。
    しかし、今は多くの愛護団体が活動しており、
    相談するだけの価値はある。
    情報は身近なところで手に入る筈だ。

    貰い手探しも、情報収集も、
    きっとやっていないんだろうなあ、
    そもそも捨てる人間は。

    動物愛護法による罰則もあるけれど、
    動物遺棄はcrimeというよりsinです。

黒絵、三回忌

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    黒絵の三回忌。

    真夜中、ツメ研ぎの音がした。
    ミライの姿を探すと、
    私の布団の上で寝ている。
    そうか。
    戻って来てるのか……
    安心したかのように、
    再び眠りに落ちて行った。

    部屋と外を自由に行き来できた時期、
    黒絵は公園などの樹木で、
    その鋭いツメを磨いていた。
    大野くんやミライが、
    室内のツメ研ぎグッズ各種で
    (タテ置き・平置き・サークルなど)
    ガリガリさせる様子を、
    不思議そうに見てたな、黒絵。

    完全室内飼いに移行後、
    気がつかないうちに黒絵は、
    ツメ研ぎグッズを使うようになってた。

    今朝、お線香をあげる時間がないまま、
    会社に出て行き、更に残業確定日だったから、
    覚悟していたより早く帰宅できて、
    ホッとしている。

    ふみも黒絵も、
    私が出社する前に息を引き取った。
    飼い主想いの奴らめ……
    

    

冬を生きる

   そういえば、
   猫の死骸って見かけないわよね。
   案外、外で生きていけるもんなのね、
   きっと。

   ――誰かが昔言ってたなあ。
   今なら、次のように答えたい。

   それはね、猫や犬の死骸は、
   通報を受け次第、自治体清掃局が出向き、
   回収してしまうから。
   だから、けっこう人目に触れないまま、
   煙になってゆくのですよ。   

   のっけからゴメンナサイ。
   死骸なんて言葉で始めて。

   私もね、偉そうな事は言えない。
   大野くんの捜索過程で、
   初めて知った事は多いんだ。

   冬の真夜中と早朝、
   亡くなって間もない猫を、
   路上で見つけ、清掃局に知らせた。
   あのコたちは交通事故に遭ったのだろう。
   事故ではなく、寒さと飢えで、
   衰弱して力尽きる猫たちも多い筈だ。

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    「野良猫の平均寿命は2~3年」
    先日ネットで見かけた記事にそうあって、
    一瞬「え?」と反論しそうになったけど、
    考えたら、平均するとそのぐらいだな。

    友人が毎晩公園でゴハンをあげ続けている。
    何匹もの猫たちの中で、
    出会った時既にシニアだったメス猫とは、
    実に8年以上のつき合いが続いたのだった。

    確実に栄養補給(水も)できる場を持ち、
    可能なら、一つではなく複数の営業先を確保、
    脅かされる事なく眠れる隠れ家が在る事。
    ――上記の条件が、猫が外で生きてゆく為に、
    必須である。
    言い換えると、この条件を満たせない場合、
    外で生き続けて行く事は難しい。


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    2年前、最期の黒絵を診察した先生は、
    「完全家猫になって6年。
     推定12歳まで生きてきたこのコは、
     十分に幸せだったと思いますよ。
     外で生きる猫は、人知れず、
     野垂れ死にしているのが現実なんです」
    と語った。
    先に書いた「野良猫の平均寿命2~3年」は、
    獣医さんの経験からも裏づけられるんだろう。

    私の部屋に押し入って、
    安心して眠れるようになった事は、
    黒絵の寿命を延ばしたに違いない。
    浅い眠りの連続でも、
    睡眠時間は猫にとって生命線だから。

    完全室内飼いに移行してからは、
    ルーティンになっていた嘔吐も激減。
    猫の自由な精神を尊重できない、
    「外出禁止」だが、黒絵の場合、
    外で他の猫や人間と接する事が
    (猫を忌み嫌う住人から投石されてた)
    相当ストレスになっていたと思われる。

       
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    前述の「餌場の確保」に関しては、
    人間のほうも日々苦戦している。
    地域猫ボランティアの方々は、
    周辺住民からの苦情を最も怖れ
    (保身ではなく、あくまで猫のため)、
    「置き餌はしない」「短時間で全猫対応」
    を心がけている。のだが……

    地域猫活動に携わっていない自分は、
    「外猫の命を心配しているのに、
     現実には行動に移していない」
    という引け目が常に在る。

    しかし、黒絵のTNRをした人と、
    大野くんの捜索過程で偶然知り合い、
    「あの黒猫、ずっと見ないな~って
     心配してたけど、あなたが
     家族に迎えてくれていたのね。
     ありがとう」と云われて、
    胸が熱くなった。
    「私なんて、2匹養うだけで精一杯で、
     毎日奮闘する皆さんに申し訳ない」
    と萎縮していたら、衝動的に保護した猫
    (イオ。ミライの天敵)について、
    「譲渡会で里親さんが見つかるまで、
     大切に保護してくれてるあなたは、
     とても良い事をしているのよ」
    と励ましてくれた。

    自分にとっての最後の宝物、
    ミライの事は護りたいです……

黒猫と出逢う


    燃えるゴミを捨てる朝。
    外に出たら、黒猫に逢った。
    生後1年前後の、若猫だった。

    たっぷり、30秒は立ち尽くしていた。
    若い黒猫から、目が離せなかった。
    折しも、黒絵の一周忌から十日。

    13年前に出逢った黒絵に、
    とても、よく似ていた。 
    後に、動物嫌いの住民の方々は、
    黒絵のこと(風貌)を「怖い」と言った。
    今でも、自分には不思議なんだ。
    「嫌い」と言ってくれたほうがいい。
    「怖い」とか、被害者っぽい表現、
    どうにかしてくれないですかね……
    (あ。でも、被害者なのか。
     「糞尿被害」を全面アピールしてるから)

    長い30秒の間、脳がフル回転してたよ。
    私が、黒い若猫に手を差し伸べたい、
    しかし、過去の経験からそれを思い留まった、
    きっと、解ってくださるでしょう……

    一年足らずで、黒絵は生まれ変わったんか?
    あいつなら。
    そうだね。
    何度でも生まれ変わりそう。
    意地で、黒猫。

(キジ)寅年

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    新年0時を路上で迎えた時、
    真っ先に思ったのは、
    外で生きる猫たちの事だった。

    「念」が使えたらいいのに。
    大野くんの捜索をしている頃から、
    心底願うようになった。
    深夜から朝までの、せめて6時間、
    温かい「ハウス」を造り出したい。
    そこで猫たちがぬくぬく眠れるよう。

    その「念」を捻り出す代償が、
    己の寿命である事は当然構わない。

    地域猫たちは「一代限りの命」と言われる
    (実際はそこを擦り抜けるからいいと思う)。
    自分も、一代限りの命だ。
    世の中で何も創り出さず、産み出す事なく、
    世の中に何も遺さないで消えてゆく。

    念が使えたら、力を捻り出せたら、
    寿命と引き換えにいくらでも援けたい。
    そこに、偽善はないと、
    自分では思っている。

黒絵のストーブ

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     ストーブをようやく片付けた。
       と言っても、ただ部屋の隅に移動しただけなんだけど。

       これは、黒絵のストーブだ。

     2011年秋。
     雨の夜、倉庫部屋に
     (乱雑に本・グッズを詰め込んだ結果そうなった)
     忍び込んだ黒絵は、そのまま結局、「うちのコ」になった。
     ただ、完全室内飼いになるのは、それから2年半後の事で、
     当時は屋外との出入りが自由にできる状況が必要だった。
     倉庫部屋のガラス窓は、24時間開けておく。
     黒絵が通り抜けできる幅の分だけ。

     説明を諸々省くけれども(長文になるので)、
     完全室内飼いになる2014年初夏まで、
     寒い時季の夜間は、黒絵専用の部屋のドアを
     閉じていた。
     朝から自分の就寝時まで、ドアは開放していて、
     (どっちみち黒絵はあまり居間に来なかった)
     夜間だけ閉じたのは、ただただ寒かったから。
     冬季、一室の窓を開けておくと凍えるんだよな。
     そんな奔放に暖房かけ放題のお金もないし。

     ドアを閉じていても、その隙間から寒気が這い寄って来る。
     寝床が用意されているとはいえ、
     外気を受ける黒絵は、居間の人間より寒いだろう。

     黒絵を大切に想う友人が、黒絵のために、
     電気ストーブを買ってくれた。
     黒絵は喜んだと思う。
     彼が初めて経験する暖かさだったに違いない。

     私が床に就く時は、さすがに消した。
     安全面と、正直言って電気代の心配から。
     でも、ある夜、たまたまドアを開けたら、
     黒絵が電気の消えたストーブの前に座っていた。
     その黒い物体の前に居れば、
     いつか暖かくなる、そう期待したんだね。

     不憫になって、厳寒期は夜間も点けたままにした。


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    今の部屋に引っ越して、年ごとに脂肪の落ちていった黒絵。
    老いてきて、いっそうストーブ前を好むようになった。

    年末も年始も、黒絵はストーブ前で過ごし、
    体調が悪くなってからも暖を取っていたけれど、
    最後の2日間はもう、ストーブの熱を求めなくなった。

    黒絵のための、黒い電気ストーブ。

    不思議なもんで、黒絵が逝った後まもなく、
    片側の電気が点かなくなってしまった。
    9年頑張ってくれたからねえ…。

    あと少し。今度は私の為に、頑張ってくれ。
    ありがとう。


     

十三回忌と四十九日

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    「3月8日が黒絵ちゃんの四十九日になります」
    と、葬儀場のご担当の方に教えられた時、
    「ふみの命日の翌日なんだな」と思った。
    また、動物にも四十九日がある事が、感慨深かった。

    今日は、3月7日。
    うとうとしている私の傍らで
    (ふみが寝たきりになってから、
     布団を敷かず、直にホカペの上に眠るようにしていた。
     今考えると、何故そうしていたんだろう?)
    既にこの時間からふみは、苦しんでいたのかもしれない。
    もっとも、眼の上の腫瘍が大きくなってから、
    ずっと苦しんでいた訳だが。



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    人は二度死ぬという まず自己の死
    そしてのち 友人に忘れ去られることの死
    (『トーマの心臓』萩尾望都)
    それなら、ふみに二度目の死は訪れない。
    私は、最期のその時まで、ふみを忘れられないから。

黒絵のシッポ

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     「黒絵ちゃんは、尻尾が長いんですね」
     と、葬儀場のご担当の方が仰った。

     黒絵の真っ直ぐで長いシッポが、
     警戒や威嚇などで膨張するところは見た事がない。
     たぶん、外で番長やってる頃は違ったんだろうけど、
     室内で大野くんやミライ相手に、
     粗暴な振る舞いをする事はなかった。
  
     まあ、大野くんは黒絵にグルーミングをして、
     そんな経験のなかったであろう黒絵の心をほぐしていたし、
     少なくとも、居場所を喪わないよう、
     黒絵は常に、知恵を働かせていたね。

     大野くんの失踪後、ミライとふたりきりになり、
     ミライの過激な攻撃を受けても、まず、反撃しなかった。
     私の留守中も、それは心に決めて守っていたんだと思う。
     生後1か月でうちに来たミライを見た時から、
     黒絵は、ミライが好きだった。
     ミライは、最後まで黒絵を嫌っていたけど……。

     黒絵から、毛やヒゲを貰う事はしなかった、結局。
     飼い猫という形ながら、飼い猫ではなかった黒絵。
     野良番長の誇りに敬意を表して、送り出した。


  ※ 写真は、以前のマンションでゴハンをあげてた頃。
     はい。全面的に私が悪いです。
     マンション住民からかなりバッシング喰らいました。
     責任取って室内飼いにしたけど(ペット可物件)、
     動物嫌いの古参からの苦情(濡れ衣)が続き、
     とうとう引っ越したんだよねえ、黒絵。

黒絵に花束を

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     自分でも意外な程、毎日涙が出てきます。

     ミライにご飯をあげる時、
     「黒絵はもう食べられないんだな」と思い、
     仕事から帰った時、腹を空かせた黒絵の出迎えがない事に
     冷え冷えとした寂寥を感じるのです。

     目の端に黒いモノをとらえると、黒絵が居ると思ってしまう。
     そういえば、オヤツ欲しさに私の横でずっと待ってたなあ。

     ミライの機嫌をとる為もあって、あえて区別をしていた。
     でも、過去にも度々書いているように、
     黒絵の存在を重荷に感じ続けていたのが本音です。

     この10年、黒絵を原因としたトラブルを抱え、
     幾度か局面を迎えながら、見捨てる選択はできなかった。
     ただ、彼を大切にしていたと誇る事もできない。

     標準的な葬儀にしました。
     市のクリーンセンターに申し込めば、
     10分の1の費用で引き取ってもらえるけれど、
     それはあくまで焼却処分であって、「弔い」ではない。
     死に水を取ったなら、骨も拾いたい。

     火葬の直前、5分程、葬儀場の職員さんが
     「最期のお別れを」と席をはずしてくれました。
     嗚咽がこみ上げ、涙が零れて、
     「ごめんなあ」としか言葉が出ません。
     黒絵、本当にごめんなあ。

     花と好きだったクリスピーを傍らに置いて、
     黒絵は、老いて病んだ肉体から離れていきました。

     Flowers for KUROE

2021年睦月

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     黒絵が亡くなった事を、お知らせします。

     1月19日の朝7時50分頃に息を引き取りました。


     昨年から段々痩せてきていたけれど、
     とっても食欲旺盛で、ミライの攻撃もうまくかわし、
     推定12歳なりに、老猫らしくなっていました。

     年が明けてまもなく、体調が急変し、
     動物病院に連れて行った時は手遅れの状態でした。
     黒絵を病院に運んで行ける、これは異常事態です。
     だって、引越しの際に捕獲器を仕掛けた程なんだから。
     絶対、捕まえるなんてできない野良番長なんだから。

     それが…あっさり私に捕まって、キャリーに入った時、
     「ああ、ついにこういう時が来たんだ」と思いました。
     黒絵が病院に行く時は、それだけ最期が近い時。
     彼を完全室内飼いにした6年前に、想像していた事です。

     「お前の死に水は取るよ」
     6年前、完全室内飼いに当たって、
     黒絵に頼み込んで土下座した時、約束しました。

     黒絵は、最期を私に看取らせてくれた。

     21日に、葬儀場で骨を拾いました。

     愛していた訳ではなかった。
     何もかも、義務と責任だと割り切っていた。
     そのつもりだったのに。

     毎日涙が出てしまうのは、どうしてだろう。
     後悔、罪悪感。

     ミライは元気です。
     黒絵はミライの事が好きだったのに、
     ミライは黒絵を疎ましく思っていたから。
     今、自分だけが君臨する部屋で、
     さらにワガママに拍車がかかっています。

     黒絵が、寿命を残して行ってくれたのかもよ……

プロフィール

あつぶこ


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